


コレは、「
強遠近法」を使用したミニチュアセット。
「
強遠近法」とは、手前側に大きなスケールのミニチュアを配置し、奥側に小さなスケールのミニチュアを配置する事によって遠近感を出す特撮技法の一つです。スモークなんかを焚いて空気感を出すと更に遠近感が増します。
東京展では普通の展示でしたが、熊本展では撮影が解禁されておりました。入口に展示されており、特撮博物館の来場者のみならず、無く熊本市現代美術館に来た人全員が撮影可能になっているあたりがニクい(笑)!
「
おっ、何だコレ、面白そう!」
ってなる事請け合いでございます。
以下、東京展同様の、折れた東京タワーを中心としたミニチュアステージであります。

・・・っとぁ! その前に
ウルトラマン!このウルトラマンは、腕を天に突き上げて巨大化する変身シーン用の撮影プロップなのですが、

横から見るとこのように拳が異様に大きく作られている事が分かりますね。
これも遠近法の応用と言える技法でありましょう。
さて、今度こそ、ミニチュアステージでございます。




JR西萩窪駅のミニチュアは、『
巨神兵東京に現わる』の為に新造されたものです。
ディテールも実際のものに準拠しているようで、かなりの再現度のようです。

『
巨神兵東京に現わる』はかなりの量のミニチュアを過去作品からの流用でまかなっているのですが、西萩窪駅とこの写真の奥側に写っている学校のミニチュアは、『
巨神兵~』の為に新造され、特撮博物館の撮影可能セットにも置かれているという、ある種貴重なミニチュアであると言うことができるのかも知れません。

ミニチュアによっては、窓の中に部屋が描き込まれたものもあります。じっと見ると絵だと分かりますが、映像作品では映る一瞬だけ騙せれば良いので、これで良いのです(笑)。
『
空の大怪獣 ラドン』では、ミニチュアのビルの中に鏡を置き、あたかもビルの中に人間が居るかのような映像を作り上げておりました。
ナイトシーンではミニチュアビルの窓に電飾を仕込んだりもしますよね。





撮影可能ブースに配置されているミニチュア全体に言える事なのですが、こうして見るとウェザリング(
平たく言えば、雨風や日光が原因の退色・汚れを表現する塗装の事です。)が徹底していますね。
本物の建物とかを見ると実際問題ここまで汚れてはいなかったりもするのですが、特撮や模型に於いては、過剰と思えるほどのウェザリングを施して漸くリアルに見える、という話があったりもします。
ミニチュアはどこまで行っても縮尺された偽物でしかないのだから、できるだけ本物に近付けなければならない。その為に本物以上に汚しを入れるというのは、なんだか面白いですよね。

特撮で鳥居と言えばやっぱり、『
三大怪獣 地球最大の決戦』で、キングギドラが盛大にぶっ壊したアレですよね。宇宙三つ首罰当たり怪獣(笑)!
『
巨神兵東京に現わる』でも鳥居を手前になめての構図があり、『
三大怪獣~』のオマージュが為されていましたが、巨神兵は鳥居をぶっ壊さずじまいでした。



看板や旗、道路標識なんかの文字も、キッチリと読めるよう精巧に出来ています。
実際の特撮映画でも、『
ガメラ 大怪獣空中決戦』のガメラが地下から出現する際のカットで公園の立て看板の文字がハッキリと読めたりするのをはじめ、色々と「
読める」看板・標識が登場していたりするので、皆様、是非、ご確認ください(笑)!

せっかくの東京タワーなのに指が写りこんでしもた。
おのれディケイド!


破壊された東京タワー! いやぁ、良いっすなぁ。
特撮モノではお決まりと言って良いほど破壊される宿命を背負った感のある東京タワーでございますが、長い歴史の中には、『
ウルトラQ』でケムール人をXチャンネル光波照射で倒すなど、怪獣・異星人相手に勝利した事もあります。
頑張れ、東京タワー! 負けるな、東京タワー! 明るい未来が、待っている!

樋口監督!
間もなく公開の特撮板『
進撃の巨人』、そして来年のゴジラ、楽しみにしていますッ!!



ステージ上空に吊り下げられた航空機群。
かつてはピアノ線を青く塗ったり逆さに吊ったりする事で吊り線をごまかしておりましたが、今日に於いてはVFXで容易に修正する事が出来るようになりました。
大規模なミニチュアセットが用いられなくなっても、こういった飛翔体とか戦車なんかはミニチュアモデルが造られ、VFXの合成素材となったりしているのでまだまだメカ系のミニチュアは、現代特撮の最先端でも需要が尽きないっぽいです。

展示スペースが無かったのか、東京展では「
天地逆転セット」として展示されていた零式艦上戦闘機はここで展示されておりました。
何も説明無しだと、逆さに吊られている展示意図がちょっと分かりにくいような気もします。不憫じゃ・・・。

庵野監督、こんなにも素晴らしい特撮博物館を、ありがとうございました!
特撮博物館の恒久化、実現したら良いですねぇ、本当に・・・。
そういった感じで、非常に愉しい特撮博物館・熊本展の観覧でありました。
半券があれば終日何回でも再入場可能という事で、
勢い余って2周しちゃったよ!!2015年6月21日現在で6万人超が足を踏み入れた特撮博物館熊本展。皆様も是非、熊本市現代美術館に足を運ばれてはいかがでしょうか。
開催期間は、6月28日までであります。
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